不安による回避行動に対するカウンセリング

 不安による回避行動は怠惰による回避行動と同様、主に不快な感情の経験を避けるための防衛的行動であると言えます。例えば、「職場で電話対応が苦手な人が電話がかかってくるなり別の仕事にとりかかる」、「接客が苦手な人がお客さんがお店に入ってくるなり用事もないのにストックルームに入り込む」、「好きな人に振られてしまうのが怖くて告白できない」などです。

 

 これを本人が「困難を回避する良い方法だ」と認識すれすれば、その回避行動を日常的にするようになるのかもしれません。状況によっては、この習慣が結果として先延ばし癖となって現れることもあります。また、職場へ出勤することができない、あるいは学校へ行くことができないなどの問題においても、その背景に不安が関わっていることがあったりすることもあります。

 

 回避行動の原因が不安であるのなら、その回避行動をやめるためにはその不安を克服する必要があります。こんなことを言うと大きな挑戦のように感じてしまうかもしれませんが、不安を完全に払拭することができなくても、不安を必要以上に強く感じないようになるだけでもその回避行動は大きく改善されるものです。

 

 不安による回避行動を克服するためにカウンセリングという選択肢があります。カウンセリングでは、その不安という感情をカウンセラーと共に深く観察し、不安を生み出す原因を特定します。そして、その原因について丁寧に話し合いを行うことによって不安を軽減させ、回避行動の改善につなげていきます。

不安による回避行動は不適切なものばかりではありません

 不安による回避行動が防衛的行動であるとして考えた場合に、例えば生命の危機に関わるような重大な局面においての回避行動については、それが適切な危険回避行動であると言えます。これは不適切な回避行動とは言えませんし、改善すべき回避行動であるとも言えません。

 

 不安による回避行動の克服に取り組んでいく際には、その回避行動がご自身にとって適切なものか、不適切なものかを識別することはとても大切です。不安が生み出す回避行動の全てが問題視されるべきものとは限らないのです。

不安による回避行動克服までのアプローチは様々です

 不安による回避行動を克服するためのカウンセリングアプローチは様々なものがあります。クライエント様の置かれている状況や症状をしっかりと理解し、個別性を尊重してカウンセリングの方向性を定めます。

 

 例えば、不安そのものに焦点を当てることなくカウンセリングを進めていくこともあります。不安とはつまり、自らの予測によって生み出されるものですが、その予測を実際に起きた出来事(仮定の出来事)として扱い、その出来事に対して自らがどのように考え、どのように捉えるべきかということに焦点を当てて話し合っていくなどの進め方です。このようにワーストケース対策を習得することによって不安を軽減させるアプローチもあります。

 

 不安による回避行動を克服させるためのアプローチは様々なものがありますが、どのようなアプローチをとるかを検討する際に、カウンセラーが気を付けるべきこともあったりします。例えば不安そのものに着目し、「本当に全員があなたのことを嫌っているのですか?」などの話し合いによって、不安に対する事実確認を重ねることで不安の軽減に成功したとします。しかし、もし「全員が私を嫌っている」という不安が事実であったとしたら、それまでのカウンセリングは何の役にも立たなくなってしまいます。これはあってはならないことです。

 

 上記の例における適切なアプローチとして、先述の「不安に感じていたことが実際に起こってしまったものとして扱っていく」ことは有効だと思います。ワーストケースとして考えられる「全員が私を嫌っている」が実際に起こってしまったとして、その状況を乗り切るための考え方や捉え方が事前に持てていれば、その難局に向き合い、冷静に対処することができるようになるのかもしれません。そして結果的に、そのワーストケースに対しても適度な不安、あるいは懸念にとどめておくことができるようになるのかもしれません。強い不安を軽減させることができれば建設的な行動がとりやすくなるのです。

 

 カウンセリングで目指すところは「回避行動の克服」です。これはどのクライエント様にも共通して言えることですが、回避行動の克服までのアプローチは個別性があるがゆえに様々です。効果的で無理のない、現実的な改善方法を一緒に考えていきましょう。

建設的な不安対処法によって勇敢でありつつも「安心を作り出す」

 ご自身で状況を変化させ、軌道修正することによって、不安を解消させることができる場合もあります。例えば、「○○ができるかどうか不安」に対して、何らかの具体的な対策により「○○ができる」と自分が思える状況を作り出すことができれば、その不安を克服することができますよね。例えばこの場合、「練習をする」といったことも立派な不安対策となり得ます。「頭の中でリハーサルをする」ことなども良い練習法と言えるのではないでしょうか。これは良い結果を期待できる自分を作り出すという取り組みです。

 

 これは「回避する」という非建設的な不安対処法ではない、建設的な不安対処法と言えます。建設的で効果的な不安対処法を見つけておけば現実逃避をする必要もなくなります。ポイントは勇敢でありつつも「安心を作り出す」ということなのだと思います。つまり「それをやっても大丈夫だ」と思える自分を作るということですね。

「逃げる」という選択肢について

 「回避をしない」という建設的な不安対処法を持てるようになると良いとお伝えしていたのに矛盾した話になってしまいますが、「逃げる」という選択肢についても言及させていただきます。状況によっては「逃げる」という選択肢は有効な不安対処法となることもあると私は考えます。

 

 例えば職場や学校で自分を執拗に攻撃してくるような人がいたとして、そのような状況においては必ずしもその人を避けずに接しなければならないということではないと私は考えます。どうしてもその相手と密接に取り組んでいかなければならない状況であればその相手を避けることは難しくなりますが、避けることが可能な状況である場合にはその相手から「逃げる」という戦術を使うことは決して間違いではないと私は考えます。実際のところは「逃げる」というよりは「近づかない」とか「距離を置く」といったあたりになるかもしれませんね。

 

 

 もしご自身がその状況に挑戦する価値を感じられるのであれば、回避せずに直面するべきです。ですが先々の人生を考えたときに「今は逃げる」ということを選択することによって、今よりも心理的健康が維持できる状況が長期的に期待できるのであれば、それは正しい選択となるでしょうし、決してカッコ悪いものでもないと私は思います。このあたりのことは頑なにならずに柔軟に考えていくこともアリかなと思います。難局に向き合うためにはエネルギーが必要です。そのエネルギーが充電されてから向き合うという選択肢もありますしね。

どうして不安に感じてしまうのかよくわからない・・・

 「不安だから」という理由でそれを回避するのはわかっていても、「どうしてそれを不安に感じてしまうのか」については意外と自分ではわからなかったりするものです。その「不安だから」の理由が回避行動の直接的な原因だったりするので、その点についてはカウンセラーと一緒にその不安を観察することが役に立つと思います。

 

 回避行動を克服させるためには、その回避行動を引き起こす不安をご自身が深く理解する必要があります。カウンセラーとの話し合いの中で、それはクライエント様が「新たな気づき」として見つけることができるでしょう。自己理解を深めることは危機管理に備えるためのアイデアを与えてくれます。

不安による回避行動のカウンセリングをご検討の方へ

 「不安による回避行動」は個別性があり、多種多様です。

 

 〇「人前に出るのが怖いから、できる限りそのような場面は避けるようにしている」

 

 〇「新しい環境に飛び込むのが怖くて行動に移せない」

 

 〇「失敗を恐れてしまいチャレンジできない」

 

 〇「怒られてしまうのではないかと思い、主張できない」

 

 不安というものは少なからず誰もが持っているものですよね。もちろん私もいくつかの不安を抱えて生きております。でも私は今自分の持っている不安が問題視すべきものだとは特に感じておりません。それは、その不安が著しく回避行動を誘発したりはしていないからです。

 

 不安を抱えていながらも回避をせずにいられる人と、不安を抱えて回避をしてしまう人との違いは、ものごとに対する受け取り方の違いです。いつだってものごとに対する自分の思考が不安を育てるのです。例えば、完璧主義思考と失敗恐怖の関連が挙げられます。完璧主義思考の方は必要以上に失敗を恐れてしまう傾向があります。

 

 カウンセリングで継続的にご自身の不安についてカウンセラーと深く話し合っていく中で、自己理解を深めることができます。それが結果的に不安による回避行動の克服につながるのです。自分の思考の癖を理解することはとても大切なのです。

 

 もしカウンセリングを受けることに不安を感じてしまうようでしたら、まずはカウンセリングの雰囲気に慣れていただくためのオリエンテーションプランをご用意しておりますので、そちらからご利用いただくことをおすすめします。カウンセリングに対する不安は軽減されると思います。

 

 不安によっていくつかの活動の機会を失っておられたクライエント様が、回避行動を克服することによって活動の幅を広げ、より豊かで彩りのある人生を送っていただけることを心より祈っております。どうぞお気軽にご相談ください。

 

カウンセラープロフィール

※精神科・心療内科へ通院されている方は、必ずカウンセリングを受けることに対して医師の承諾を得てからお申込みをされますようお願いします

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