完璧主義思考と失敗恐怖

 完璧主義思考の人は、課題に対して一切の妥協もせず、納得のいく完成度に仕上げるための努力を惜しみません。これは長所と言えます。しかし一方で、完璧主義思考は回避行動や先延ばしのリスクを高めます。これは短所と言えます。例えば、自分自身がその課題に対して「やれる」という絶対的な自信を持つことができない限り、いつまでもその課題に取りかかれないなどということが起こり得ます。これは失敗に対する不安や恐れが原因で起こる現象と言えます。

 

 完璧主義思考の人は失敗に対する不安や恐れが多岐に渡ると、「何もできない」自分に対して辛さや苦しさを感じてしまうことがあると思います。また、課題への取りかかりの困難だけでなく、課題への取り組みの継続に困難を感じてしまうこともあるでしょう。「これは完璧にできそうにない。ならばやる意味がない」などのように。

 

 これらの振る舞いがまわりの人たちに、「諦めが早い人」、「飽きっぽい人」、「怠惰な人」などの印象を与えてしまうのは辛いことだと思います。表面上はそのように見えても、実際は怠惰というものとは少し違ったことが心の中では起こっているわけですからね。

 

 

 自らに課題を選択する余地のある状況では、「上手くやれる」という自信が持てるものを選べばいいので何の問題も起こらないと思います。しかし、自らに課題の選択権がなく、不運にもその課題が自らの得意とするものではなかった場合に、この失敗恐怖が芽生えてしまうことがあると思います。完璧主義思考を持っている限り、「できない自分に直面することはどうしても避けなければならない」と考えてしまうでしょうから。つまり自然とプライドが高くなってしまうんですね。

 

 このような状況で、「その課題に対する絶対的な自信を持てるようにしよう!」と熱くなってしまうのは良くありません。間違いだとは言いませんが、私は賛成しません。この考えを強く抱くと、更に失敗恐怖に囚われてしまう可能性があるからです。プレッシャーを高めてしまうんですね。得手不得手は誰にだってあるものです。

 

 とは言え誤解しないで欲しいのですが、課題に対する自信を持てるようにするための努力を否定しているわけではありません。例えば練習という努力。練習は自分を裏切ることはありません。練習は成功の確率を高めるために行うものだと言えますよね。これは否定するどころかむしろ、課題をより良いかたちで完遂させるために必要なことであると言えます。

 

 

 結局のところ完璧主義思考を手放すためには、現実的な考え方を身につけることがまずは大切なのだと思います。その課題が自信の持てるものであろうがなかろうが、「絶対に失敗することなく、完璧にその課題を成し遂げる」という考えが果たして現実的であると言えるでしょうか?「絶対に失敗しない」なんてことは現実的にあり得るのでしょうか?そもそも世の中に100%なんてものはあるのでしょうか?

 

 完璧主義思考をやめたいと思うのであれば、まずは「失敗する可能性もあるということを認める」ことです。100%がないとするならば、100%にできるだけ近づこうと考えれば良いのです。「自分の今手にしている能力の中でベストを尽くして、できるだけ100%に近づこう」と考えるのです。

 

 失敗する可能性の余地を与えた現実的な考え方を持つことで、プレッシャーは緩和されます。今までよりも少しだけ柔軟な考え方をすることによって、失敗に対する不安や恐怖による先延ばしや回避行動は解消されていくはずです。完璧主義思考の治し方とは、現実的な思考を身につけることなのだと私は思ってます。これは決して「妥協」とは違うものです。

 

 

 そもそもの話なのですが、失敗がもたらすものとは、災難だけではないということも忘れてはなりません。失敗は多くの教訓を与えてくれます。そしてそれは、成功からは決して得ることのできない非常に有益なものだったりもするのです。失敗なくして成功は得られないということですね。「地道に」という言葉を忘れて、ジャンプアップしようと考えてしまいがちなんですよね。人間って。

 

 

 最後に「完璧にできなければやる価値がない」の考えについて。これも完璧主義思考の典型的な言葉だったりしますが、この考えを持っていると結果的に自分の可能性を狭めてしまいますよね。ちょっとカッコイイ考え方だとは思うのですが、失敗の経験を必要以上に回避しようとしてしまうのもいかがなものかと。失敗は誰だってしたくはないものですけど、結局はがむしゃらにやったほうがいろんな経験をすることができて、そこから学習する機会をたくさん得ることができるわけですからね。

 「挑戦」や「冒険」という言葉について考えてみることも有意義なことだと思います。かなり抵抗のある言葉だとは思いますけどね。

 

 

 

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