不安による先延ばしについて

 不安による先延ばしは回避行動であり、ネガティブな未来予測に対する防衛的行動です。

 

 まず最初にお伝えしたい大切なこと。それは、不安による回避行動には、不適切でネガティブな感情を経験することに対する回避だけではなく、生命の危機に関わるような重大な局面における回避があるということ。このような危険回避である場合には、それが適切な防衛的行動であると考える必要があります。不安を扱う際にこれは前提となります。

 

 

 不安による不適切な回避行動としては、自分のやってみたいと思う事柄に対して「大変な努力が必要だし、辛い目にもあうだろうから自分にはそれが耐えられないかもしれない」とか、仕事の営業先で自分の苦手な人がいるような場合に「あの人に会えばまた嫌な思いをするだろう」などの思いから派生する回避行動が挙げられます。

 

 このような不適切な行動を適切な行動へと変容させるためには、不安の対象に対する考え方の修正が必要です。「大変な努力が必要だし、辛い目にもあうだろうから自分にはそれが耐えられないかもしれない」であれば、「大変な努力が必要だし、辛い目にもあうだろうけど、自分のやりたいことのためだったら耐えられないこともない」などといった考えが持てれば良いでしょうし、「あの人に会えばまた嫌な思いをするだろう」であれば、「あの人に会えばまた嫌な思いをするかもしれないけど、これは仕事なのだから仕方がない」などと思うことができれば不適切行動は解消されるかもしれません。

 

 このような考え方の変容にまず必要なことは、「大変」や「辛い」や「嫌だ」といった思いは、その出来事に対する自分の捉え方や考え方が生み出しているものであるということを理解することです。そして、不安は自らの予測に基づくものであることを理解した上で、その予測が実際に起きてしまったときにその出来事を自分がどのように捉えるか、そしてその瞬間をどのようにして生き抜くかを考えることです。それはその課題に取り組む際の事前準備として機能します。

 

 もし不安の原因が単純に準備不足や練習不足によるものであれば、それらの不足を補うことによって不安が解消されることもあります。その際にもし、その不足を補うための取り組みがなかなかできないというのであれば、それができない原因を考えていく必要があります。その原因としては、「怠惰な気持ち」や「準備や練習に対する取り組み方の知識不足」などが考えられます。その原因が明確化されれば、その原因について考え、具体的な対策を講じることができるようになります。

 

 

 不安による回避行動の結果としては先延ばし以外に、「やらないという決断」というものもあります。冒頭の危険回避などもそれに当たりますが、「それをやらない」と決断している以上、その時点でそれは先延ばしにはなりません。ただし、他者がその決断を知り得ない場合には、その振る舞いが他者に対して先延ばしの印象を与えてしまう可能性があるということも忘れないようにする必要があります。